防衛医科大学校様が、胃癌に関する研究成果をメディアに向けてプレスリリースした際の原稿となります。




 プレスリリース




胃がん治療に新たな可能性
~腹膜播種に対するナノ粒子を用いた光治療~




「防衛医科大学校(埼玉県所沢市)」上部消化管外科らの研究グループは、「㈱島津製作所(本社:京都市中京区)」が開発した、光に反応するナノ粒子を利用した“マウス胃がん腹膜播種(ふくまくはしゅ)モデル”において、腫瘍を縮小させ、マウスの生存期間を大幅に伸ばすことに成功した。


尚、本研究成果は今年で創刊104年目を迎える日本癌学会の公式英文誌「Cancer Science」を通じて、日本時間の11月6日に発表された。


胃がんは、「腹膜播種(ふくまくはしゅ)(*1)」と呼ばれる特徴的な進行形式を持つ。これはがん細胞がお腹の中に散らばるように転移し、増殖することで発生する。


腫瘍の大きさは小豆程度。従来のCT検査などでは発見が難しく、治療は抗がん剤の投与が中心となる。しかし治療に反応しないこともあり、患者の余命は1年半程度。また腫瘍が大きくなると食事の摂取が困難となり、患者にかかる負担も大きいものとなる。


防衛医科大学校 上部消化管外科、分子生体制御学講座、防衛医学研究センター外傷研究部門の研究グループは、島津製作所が開発した「ラクトソーム」という生分解性の分子に、インドシアニングリーン(ICG)(*2)という色素を取り込ませた、「ナノサイズの粒子(ラクトソームICG)」を利用した研究の結果、マウスに作った腹膜播種を縮小させ、同モデルにおける生存期間を2倍に延長させることに成功した。


このナノ粒子は、血管内に投与するとEPR効果(*3)と呼ばれる現象により、病変部にのみ集積する。また、同粒子に取り込ませたICGは、弱い光を照射することで蛍光を発する性質を持つ。


この光を手がかりにして、これまで困難であった腹膜播種の診断が可能となった。そればかりか、強い光を照射されたICGが産生した活性酸素が、がん細胞を傷害する効果も持つ (光線力学療法(*4))


結果、この新しく開発された「光反応性のナノ粒子」は、がんの診断と治療を同時に行うことを可能とした。


また、本治療法が従来の抗がん剤の投与を中心とした治療法に代われば、心臓や腎臓などへの重い副作用を避けると共に、抗がん剤が効かないケース(耐性)にも対応することが出来る。


更に、本治療法のヒトへの臨床応用を行う場合には、胆石症(胆のうや胆管に石が出来る症状)等に用いられている腹腔鏡(ふくくうきょう)(*5)による治療手段をとることが可能であり、負担の少ない治療方法となり得る。


「光反応性のナノ粒子」を用いた治療法が、今、胃がん治療に新たな可能性を拓こうとしている。




■註釈


*1 腹膜播種:胃がんに特徴的な進行形式で数mm~数cmのしこりとして腹腔内に転移した腫瘍。


*2 インドシアニングリーン:緑色の色素で、肝臓や心蔵の機能検査に使用されている薬剤。


*3 EPR (Enhanced Permeability and Retention)効果:がん組織は、正常組織に比べて血管壁の物質透過性が亢進しており、数十?数百ナノメートルの小孔を有する一方で、リンパ系の構築が未発達であるために、ナノ粒子が集積し滞留しやすくなる効果。


*4 光線力学療法:生体内に光増感剤(この場合、インドシアニングリーン)を注入し光を照射すると反応性の高い酸素(活性酸素)を生じ、これによってがんなどの病巣を治療する方法。


*5 腹腔鏡(ふくくうきょう):おなかに太さ1cm程度のカメラを挿入し、二酸化炭素を充満させておなかの中を観察したり、手術をする方法






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